
この記事は、「うちの子ってぽっちゃり…?学校健診で肥満って診断されてしまった…本当に大丈夫?」と心配な保護者の方へ向けて、
小児肥満の見方・成長期に必要な食事・将来への影響などを、消化器内科専門医と管理栄養士がやさしく解説しています。
痩せさせるより“伸ばす”ことを大切にしたアプローチで、心と身体の健康を守るヒントをまとめました。
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学校健診で「肥満」と言われたときに知っておきたいポイントを簡潔にまとめました。
- 肥満ってどう判断される?
学校健診では「肥満度」をもとに+20%以上が軽度肥満、+30%以上が中等度以上とされ、医療機関の受診が勧められます。 - 将来への影響は?
肥満は生活習慣病のリスクだけでなく、自己肯定感の低下や将来の年収にも影響する可能性が報告されています。
学校健診の「肥満」ってどう判断されてる?
肥満度とは?学校健診で使われる基準
学校健診では、子どもの身長・体重をもとに「肥満度」という指標が使われます。以下のように分類されます:
肥満度 | 分類 | 対応 |
---|---|---|
+20%〜30% | 軽度肥満 | 生活習慣の見直しを |
+30%以上 | 中等度〜高度肥満 | 医療機関での相談を |
肥満度の計算方法
肥満度は、以下の計算式で求められます:
※標準体重は、身長から求められる統計的な平均値に基づきます。
見た目では判断しにくいこともあり、健診で指摘されたことは大切なサイン。放置せず、一緒に健康な成長を目指しましょう!
小児期の肥満が将来に与える影響とは
肥満がもたらす健康・心理・経済へのリスク
小児期の肥満は、単なる「ぽっちゃり」では済まされないこともあります。見た目や健康リスクだけでなく、将来的な社会的・経済的影響も報告されています。
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病
- 自己肯定感や自尊心の低下
- 将来の体重管理が困難に
- 成人後の年収や社会的地位への影響(肥満による差別・職業選択の制限など)
欧米の研究では、「子どもの頃のBMI(肥満指数)が高いことが、成人後の学歴や収入にネガティブな影響を及ぼす可能性がある」と報告されています。
また、身長も将来の自己評価や職業的評価に影響を与えるという見解があり、欧米やアジア各国では“成長支援”が教育・医療分野で注目されています。
なぜ今、「成長外来」が増えているのか?
日本国内でも特に東京・名古屋・大阪といった都市部を中心に、「身長外来」「成長外来」が増えてきており、これは単に“見た目”の問題ではなく、成長期のサポートが本人の将来を左右する要素であると多くの家庭が感じているからです。
「今、知ること」「今、支えること」が、10年後のお子さまを大きく変えます。医療としての介入とともに、保護者の温かい見守りと声かけが大きな力になります。
小児期からの肥満のデメリット
心の成長にも影響する肥満
肥満が続くことで、見た目や健康だけでなく、心の発達にも影響が出ることがあります。たとえば体育の授業での運動がつらくなったり、からかわれることで自信をなくしてしまったりするケースも少なくありません。
- 周囲との比較による自己肯定感の低下
- 集団行動や外遊びへの参加意欲の減少
- 思春期以降の摂食障害や過度なダイエットへの不安
特に大切なのは、「本人が肥満に気づき始める時期」に適切な声かけができるかどうかです。無理に痩せさせようとするのではなく、お子さまが安心して話せる環境づくりが、長期的な心身の健康に繋がります。
痩せるより「伸びる」!成長期の食事のコツ
成長期に欠かせない栄養素とは?
当院では「体重を減らす」のではなく、「身長をしっかり伸ばす」ことを第一に考えた食事指導を行っています。
特に重要な栄養素は以下のとおりです:
栄養素 | 役割 | 多く含む食品 |
---|---|---|
たんぱく質 | 筋肉・骨の材料 | 魚、鶏肉、大豆、卵 |
鉄分 | 貧血予防・脳の発達 | 赤身肉、ひじき、納豆 |
ビタミンB群 | エネルギー代謝 | 豚肉、玄米、レバー |
「食べない」より「選ぶ」へ
食事の管理=「我慢」や「制限」と思っていませんか?
実は、お子さまの食生活を整えるために大切なのは、「食べさせない」ことではなく、「どんなものを、どんなタイミングで食べるか」を知ることです。
栄養のバランスや食べ方の工夫を知れば、毎日の食事が無理なく・楽しく変わっていきます。
「選ぶ力」を育てることが、お子さまの一生の健康につながる——そんな食育を、私たちは大切にしています。
あさひの森の食育サポート|管理栄養士が対応
食習慣はご家庭のリズムに合わせて
当院では、専門の管理栄養士が個別にご家族と面談し、生活スタイルやご家庭の環境に合わせたアドバイスを行っています。
- 毎日の食事でできる「ひと工夫」
- スナックや外食との付き合い方
- 無理なく続く食べ方のコツ
必要に応じて医師による検査も対応
また、必要に応じて、内分泌的な異常がないかのチェック(甲状腺ホルモン)、糖尿病のリスクチェック(血糖・HbA1c)、脂肪肝の有無(腹部エコー)など、医師と連携して総合的な評価を行うことも可能です。
ご本人のやる気を引き出す声かけや、自己肯定感を高める関わりも大切にしています。

管理栄養士
若山あみ
あさひの森の食育サポート|管理栄養士が対応
当院では、専門の管理栄養士がご家庭ごとの生活リズムに寄り添った食事アドバイスを行っています。
- 毎日の食事でできる「ひと工夫」
- スナックや外食との付き合い方
- 無理なく続く食べ方のコツ
小学生から高校生まで、幅広い年齢のお子さまにご相談いただいています。
「成長期の食事を見直すこと」は、決して変なことでも、大げさなことでもありません。
ご家庭だけで抱え込まず、ぜひ私たちと一緒に考えてみませんか?
親子のもめごとや不安もやわらげながら、安心して続けられる食育サポートを大切にしています。
よくあるご質問Q&A
Q. 厳しいダイエットになるんじゃないかと心配です。
A. いいえ、当院では「成長を妨げない」指導が基本。しっかり食べながら健康を目指します。
Q. 兄弟の中で1人だけ連れていくのは気まずいです…
A. ご兄弟ご一緒でもOKです。家族全体での食育もお手伝いします。
Q. 学校で言われただけなのに、病院まで行く必要ありますか?
A. はい、学校健診はあくまでスクリーニング(ふるい分け)です。放置せず、医療的な評価とアドバイスを受けることで、将来の健康を守る第一歩になります。
小児の肥満と健康に関する最新研究まとめ
最近、海外で発表された小児肥満に関する非常にインパクトの強い研究をご紹介します。
「ただの肥満」で終わらせてしまうと、将来の健康や寿命に大きな影響があることが、今回の研究で明確に示されました。
📌 欧州肥満学会2025で発表された研究①の要点
- 4歳時点で重度肥満(BMI Zスコア3.5)→平均寿命39年まで短縮
- 35歳時点で2型糖尿病を発症するリスク:最大45%
- 6歳までに体重を減らせば、寿命+25年の改善可能性
- 早期の減量介入が健康寿命を大きく伸ばす

この研究は、肥満が単なる見た目や一時的な問題ではなく、「命に関わる病気」だということを改めて教えてくれます。
当院でも、学校健診や日常診療で気づいた体重増加については、早期に保護者と一緒に取り組むことを大切にしています。
「もう少し様子を見ようかな」ではなく、「今のうちに動こう」が未来の健康につながります。
出典:2025年 欧州肥満学会(European Congress on Obesity)で発表された研究
論文タイトル:「小児肥満が将来の健康と寿命に与える影響を定量化した研究」
(原題:Research quantifies impact of childhood obesity on long-term health and life expectancy)
研究発表者:Dr. Urs Wiedemann(stradoo GmbH・ドイツ)および、欧米の研究機関チーム
📌 欧州肥満学会2025で発表された研究の要点②
- 10代の腹部肥満は、脳の構造(記憶・感情制御)に異常な変化をもたらす
- 海馬(記憶・学習)は平均約6.6%肥大、扁桃体(感情制御)は約4.3%肥大
- 脳の変化は、集中力・感情コントロール・学習力の低下リスクと関連
- 社会的に不利な環境では、脳の発達の遅れがより顕著に
- 早期の生活改善が脳の健康維持・認知症リスク低下にも寄与

思春期は、脳が大きく成長する大切な時期です。
この研究は、肥満が“脳の発達”にまで影響することを示しており、非常に衝撃的です。
記憶力や集中力、感情コントロールなどにも関係するため、生活習慣を整えることが心の健康にもつながると実感しています。
体だけでなく「脳の未来」を守るためにも、早めの介入が大切です。
出典:2025年 欧州肥満学会(European Congress on Obesity)で発表された研究
報道タイトル:「思春期肥満が脳に与える“深刻な影響”を明らかに」
(原題:The ‘particularly alarming’ ways that obesity affects teenage brains revealed in new study)
研究発表者:Dr. Augusto César F. De Moraes(テキサス大学ヒューストン校)および国際研究チーム

執筆・監修:福田頌子(あさひの森内科消化器クリニック 院長)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 内科認定医
執筆・監修:若山あみ(あさひの森内科消化器クリニック 管理栄養士)