
この記事は、「胃カメラでピロリ菌って本当にわかるの?」「胃カメラやらないといけないの?」と疑問を持つ方へ向けて、
ピロリ菌の正体・胃カメラの精度・除菌の流れまで、消化器内視鏡専門医が詳しく解説。
胃がんリスクや再感染の注意点まで、今知っておくべき情報をまとめました。
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胃カメラとピロリ菌に関する基本情報をサクッとチェックできます。
- ピロリ菌とは?
感染経路は幼少期の生活環境が多く、胃がん・胃炎・潰瘍の原因にも。 - 胃カメラでわかる?
内視鏡で“ピロリ菌感染のサイン”を視認できますが、確定診断には検査併用が必要です。 - 除菌は必要?
胃がん予防の観点からも、陽性なら原則除菌が推奨されています。
ピロリ菌って何者?感染経路と放置リスク
ピロリ菌が引き起こす病気|胃がん・慢性胃炎・胃潰瘍とは
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜にすみつく細菌です。多くは幼少期の不衛生な水や食器の共有などで感染し、一度感染すると自然には消えません。慢性的な胃の炎症を引き起こし、長期的には胃潰瘍・十二指腸潰瘍・慢性胃炎、そして胃がんの発症リスクを高めるとされています。
ピロリ菌は倒す(除菌する)ことができる?治療の必要性と条件
はい、ピロリ菌は抗生物質と胃酸を抑える薬を組み合わせた内服治療で、きちんと「倒す(=除菌する)」ことができます。
特に胃がんのリスクを減らす目的での除菌治療は非常に重要で、保険適応の対象にもなっています。
ただし、除菌治療を保険で行うには、事前に胃カメラ(内視鏡検査)を受けて「胃炎の所見がある」かつ「その他検査でピロリ菌陽性」を確認する必要があります。
ピロリ菌を放置してしまうと、加齢とともに胃の粘膜が萎縮し、胃がんのリスクが高まってしまいます。だからこそ、早めの検査と除菌がとても大切です。
胃カメラでピロリ菌感染がわかる?内視鏡検査の実力
胃カメラでわかるピロリ菌のサインとは?
内視鏡検査では、胃の粘膜に現れる特徴的な変化からピロリ菌感染を「疑う」ことが可能です。具体的には、モザイク状発赤や粘膜の腫れ、血管の消失などがあげられます。
検査をする医師の技術に左右される?
ピロリ菌感染を胃カメラで「疑う」には、胃の粘膜の色調や模様の変化、血管の見え方など、非常に繊細な所見を観察する必要があります。 こうした所見はわずかな違いであり、それを見逃さずに読み取るためには、医師の経験や観察力、そして技術力が重要になります。
例えば、同じ患者さんの胃の写真を見ても、経験の浅い医師では「異常なし」と判断してしまうことがある一方で、熟練した内視鏡専門医であれば、ピロリ菌感染を示唆する微細なサインを見逃さずに捉えることができます。
そのため、胃カメラ検査でピロリ菌の有無をより正確に把握したい場合は、内視鏡専門医のいる医療機関での検査がおすすめです。 「異常なし」と言われたとしても、医師の見解に不安がある場合は、セカンドオピニオンを含めて再検査を検討することも大切です。
胃カメラだけで判定できる?限界と注意点
内視鏡所見はあくまで“疑わしい”という視覚的なサインに過ぎず、確定診断には追加の検査(生検・呼気・便・血液など)が必要です。
また、検査前に注意すべき点として、PPI(プロトンポンプ阻害薬)の内服が検査結果に影響を与える可能性があります。
PPIは胃酸の分泌を抑える薬で、ピロリ菌の活動を一時的に抑える作用もあるため、尿素呼気試験や便中抗原検査などの精度が低下することがあります。 そのため、検査前には1〜2週間程度PPIを中止することが推奨されるケースもあります(医師の指示に従ってください)。
正確な診断のためには、服薬状況や既往歴も含めて、内視鏡専門医と相談しながら適切なタイミングで検査を受けることが大切です。
異常なしでも油断禁物?ピロリ菌が見逃されるケース
胃カメラで「異常なし」と言われると、一安心したくなる気持ちは当然ですが、それだけでピロリ菌感染が完全に否定されたわけではないことを知っておくことが大切です。
特に、軽度の感染では、胃の粘膜が一見きれいに見えることも多く、見た目だけで判断するのは難しいケースもあります。
また、胃カメラの画質や照明、観察範囲の違いによっては、微細な変化を見逃してしまう可能性もあります
「異常なし=ピロリ菌なし」とは必ずしも言えないため、気になる症状がある方や、ご家族に感染者がいる方は、積極的にピロリ抗体検査(血液検査)の追加検査を受けることが推奨されます。
ピロリ菌を正確に調べるには?検査の種類と精度を比較
組織検査(生検)でわかることと検査精度の違い
胃カメラ中に胃の粘膜を一部採取し、ピロリ菌の有無を顕微鏡で調べる方法を「組織検査(生検)」と呼びます。最も精度が高く、特に慢性胃炎や潰瘍がある場合に有効です。ただし、除菌後や軽度感染の場合には検出率がやや下がることもあります。
便・呼気・血液検査|ピロリ菌の検査方法を徹底比較
便中抗原検査は、保険適用で精度も高く、除菌後の判定にも使われます。尿素呼気試験は簡便で、除菌判定にも有効なゴールドスタンダードです。血液検査は過去感染の有無が分かりますが、現在の感染状態は判別できないことがあります。
陽性だった場合の流れと、2回目以降の再検査について
検査で陽性だった場合、除菌治療が保険で可能です。1回の除菌で成功する確率は80~90%程度。失敗した場合は2次除菌(薬の種類を変える)を行い、それでも難しい場合は専門施設での対応が必要です。
除菌成功後も再感染や胃がんのリスクをゼロにすることはできません。年1回の胃カメラ検査が推奨されるケースもあります。
ピロリ菌が陽性だったら?除菌治療の流れと注意点
除菌治療は保険適用?費用・受け方を解説
胃カメラで「慢性胃炎」または「潰瘍」が認められたうえで、ピロリ菌が陽性であれば除菌治療は保険適用となります。3種類の薬を1週間服用する「3剤併用療法」が基本で、費用は自己負担3割で3,000円前後+再検査料です。
治療薬の種類と服用方法|治療中の注意点
治療では抗菌薬2種類+胃酸を抑える薬の内服を7日間続けます。途中で中断すると除菌率が下がるため、決められた時間に飲み切ることが重要です。副作用(下痢・味覚異常など)を感じたら、医師に相談しましょう。
除菌に失敗したときの再治療と生活上の注意
1次除菌で効果がなかった場合は、別の抗生物質を使用した2次除菌を実施します。再除菌後は、1ヶ月以上あけて呼気試験などで成功確認を行います。
🟢 ボノサップ400
- 1.ボノプラザン(PCAB): 20mg × 2錠
胃酸を強力に抑える薬 - 2.アモキシシリン: 250mg × 6錠
ペニシリン系抗生剤 - 3.クラリスロマイシン: 200mg × 2錠
マクロライド系抗生剤
🟠 ボノピオン400
- 1.ボノプラザン(PCAB): 20mg × 2錠
胃酸を強力に抑える薬 - 2.アモキシシリン: 250mg × 6錠
ペニシリン系抗生剤 - 3.メトロニダゾール: 250mg × 2錠
ニトロイミダゾール系抗生剤
💡 違いは「3つ目の抗生剤」にあります。
ボノサップはクラリスロマイシン、ボノピオンはメトロニダゾールを使用。
クラリスロマイシン耐性が疑われる場合などには、ボノピオンが選ばれます。
Q&A|胃カメラ・ピロリ菌検査でよくある質問まとめ
バリウム検査ではピロリ菌感染の有無までは分かりません。粘膜の状態を直接観察でき、検査と同時に組織採取もできる胃カメラの方が圧倒的に有利です。
はい、ご家族が陽性だった場合は感染リスクが高いため、ぜひ一度検査を受けてください。特に同居している方・幼少期に同じ食器を使っていた方は要注意です。
まとめ|胃カメラとピロリ菌検査で未来の胃がん予防を
ピロリ菌は、自覚症状がないまま胃の中に潜み、長期的に胃の健康を脅かします。胃がんや胃潰瘍のリスクを下げるためにも、早期発見・早期除菌が重要です。
当院では、内視鏡専門医による丁寧な胃カメラと、複数のピロリ菌検査に対応しています。ご自身やご家族の健康のためにも、ぜひ一度ご相談ください。
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